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どうぶつ畑

どうぶつ畑

学校動物飼育

 「学校でウサギを飼ってます」「保育園でモルモットを飼育しています」
こんなことを聞くとだいたい対外的には、情操教育に力を入れているんだと思われると思います。しかし実際はどうでしょうか。動物の飼育はたいてい飼育委員会なるものがつくられ希望する子どもの手によってなされますが。子どもに実際の指導をするは飼育担当の先生方です。はたしてどれだけの先生が飼っている動物たちに対して正しい知識をもっているでしょうか。幼いころの情操教育は確かに大切です。命そのものに触れる機会がなくなった今、動物に触れることができるのは学校だけ、という子どももいることでしょう。しかしおこなわれている飼育管理がずさんなものならば実施している情操教育のための動物飼育は意味の無いものになってしまいます。
 私事ですが、小学校のときは3年間飼育委員でした。大きなトリ舎にクジャクのオスとメスが一羽ずつと白色レグホンのオスが一羽、確かメスもいたと思いますが何匹いたかは忘れてしまいました。1,2羽だったと思います。あとそこにウサギが2,3匹いたと思います。いま思うとウサギとトリが同じところで飼われていたという事に驚きます。トリ同士の同居は珍しいことではありません。トリの数は畜舎の広さに対して良いものだと思います(当時は体の小さい小学生だったので感じている広さは実際に比べたら狭かったのかもしれませんが)。高さもあってクジャクなどのトリには良かったと思います。5,60センチのコンクリートの基礎に金網を張り巡らせ、中の高いところに段があってトリがそこで休めるようなタイプのものでした。畜舎の下には浜砂のようなさらさらした砂が敷き詰められていたように思います。この点でウサギの穴掘りとトリの砂浴び・そのうの問題の面はクリアしていますね。飼育の仕方は良く覚えていません。どんなえさを与えていたのかも思い出せません。先生から特別、飼育方法について教わった記憶もありません。ウサギはさておきこれくらいの大きさの鳥類はスペースさえ十分あればそんなに手のかかるものではありませんが。具体的なことは覚えていませんがとにかく楽しかったことだけは覚えています。ですが5年生のときだったか、金網にホースが差し込まれ水が入れられてウサギはみんな死んでしまいました。あの思い出が一番強烈でその後そこがどうなったかすら思い出せません。
 私の勤める動物園は小さく地域にとても密着しているものです。学校動物の情報なども良く入ってきます。近くの幼稚園などに繁殖したモルモットを分けたりということもありますし、そのような学校から飼育の相談なども受けます。それをみていると、学校、特に小学校の先生方の戸惑いが感じられます。保育園や幼稚園はその園自体でどんな動物を飼うかなど動物飼育についてのあれこれを先生方が話し合って決められているようですが、小学校の場合、国が飼うことを推奨していてそれで飼ったり、飼育当番の係りに任命されてしまったり、とそこに勤める先生たちの意思で飼われていないという状況が多いということです。もちろん学校全体で動物飼育を意欲的にされているところもありますが数的にはとても少ないのではないでしょうか。
 これは我が園によくこられる方のお話ですが、子どもさんの通われる学校でウサギがこどもを産んでしまい無理な出産が祟った親が死亡、残ったこどもをどう飼育したらいいか悩んでいる、と相談を受けたことがありました。先生方はどうせ育たないからといってそれ以上の処置を望まなかったそうですが子ども達に説得されて人工哺乳で育てる方向に落ち着いたようです。良く聞くとどうやらよそからオスを拾ってきて元からいたメスとかかってしまったんだそうです。このような問題は学校飼育には非常に多く、5匹だったモルモットがいつのまにか60匹以上になってしまった、なんて学校もありました。オスとメスを一緒にしていればこどもができることくらい動物飼育の経験が無くてもわかりそうなものです。オス、メスの見分けがつかないから見てくれ、というものでした。上記の学校もその典型でしょう。しかもこの学校のメスは一度出産したあとまたすぐに妊娠してしまい、2ヶ月とたたないうちに出産したそうです。それで死亡したんでしょうね。このケースは完全に不適切な飼育の結果です。飼い主の無知のため(この場合は学校ですが)、このメスのウサギは死んでしまったのです。その方はやはり先生たちと子ども達の間に生き物に対する熱心さの温度の差を感じたそうです。今回の話でも生徒たちの熱心さに先生方が折れたような感じです。この話を聞いたとき、子どもではなくまずおとなが情操教育をもう一度きちんと受けるべき、と強く感じました。こんなことではなんのための情操教育だろうと憤りを覚えます。本末転倒もいいところです。学校などの人が多いところでは自分がやらなくても誰かがやってくれるだろうといった人任せ的な感情が働いてしまうそうです。夏休みなどの長期休暇の間も世話に訪れなくてはならず当然係りの先生は出勤しなくてはなりません。やはり面倒に思ってしまうようです。ですが動物飼育にお休みが無いのは当たり前のこと。それを面倒がっていてどうして動物が飼えるでしょう。ましてどうして教育なんてできるんでしょう。後日談ですが、人工哺乳していた仔ウサギはしばらくして全て死んでしまったそうです。ですが、その学校にはもう一匹メスがいて、そのメスも出産してかわいい仔ウサギがまた産まれたそうです。今度こそはきちんと育てるんだ、と今こども達はがんばっているんだそうですよ。動物の死というものを通して子どもたちの命に対する意識は高まったようですがこのような不幸な死ではなくきちんとした形の「死」で命の大切さを学んでいってもらいたいと願ってやみません。
 ちなみに私の勤める動物園のある地域では、その地域の獣医師会の先生方が学校動物飼育(この場合公立の小学校のみ)の飼育指導を行っており、我が園でも微力ながら協力をさせていただいています。獣医師方が中心となり、年に一度、各学校で飼育係の先生を集めての講義と、実際に動物を使い扱い方のレクチャーを行っています。こられる先生の中には今まで触ったことも無い、という方も多くこのような状況の中でよく学校で動物飼育なんてことをやろうと決めたもんだとあきれることもしばしばです。各学校には担当獣医師がついており何かあった場合にはその医院と連絡を取り合うような形にもなっているそうです。この地区の獣医師の先生方は全国的に見てもとても学校の動物飼育問題について熱心らしく、わたしもそのようなお手伝いができることを幸せに思っています。この取り組みは地域によって様々だそうであまり熱心でないようなところもあるそうです。上で紹介したウサギのいる学校の地区では残念ながらこのようなことは行われていないそうです。ですがせっかくこういった取り組みがなされていても活きてこないのでは意味がありません。このようなことが行われている地区の学校さんは是非有効に活用していただきたいと思います。






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